「ことばが
まるでうぶ毛を失くしたかのように
むきだしで
人にぶつかるようになった」
「ことばが現実の前で
うなだれる光景もよく目にする」
「ことばの暴力と無力。
ことばの横暴とことばの喪失。
〜
ことばが両端に裂かれていて
この国を「言霊の幸わう国」
などとは口が裂けても言えない」
「口を塞がれてもことばを失っても
表現が追いつめられているだけで
ことばの可能性が
根こぎにされたわけではない。
ことばの失いかけていることを
はじめて、そしてもっとも痛切に
知らせるのもことばだったし
ことばの無力にうなだれる声を
もっとも繊細に伝えてきたのも
ことばだった」
「ことばの制圧に 〜
抵抗してきたのもことばだった。
そしてその最終的な挫折をすら
人はのちにことばで反芻した。
そういうことばの力に
一人ひとりがそれぞれに
まぎれもなく支えられてきた」
「ひっかかるところを大事にしている」
「それらがフックになって
つぎの思考が始まればいい」
〜2022.09.16.朝日新聞より