最も印象的だった
ことば抜粋ふたつ
ミケランジェリの演奏について
吉田秀和は
「かおりの高い高音
チェンバロかなにかのような
少し嗄がれた半弱音
ひきしまったきめのこまかい半強音
よく冴えよく響く強音等を
基調にした豊かな音色の饗宴が
くりひろげられる。
その上
五曲のソナタのほとんどすべてが
多かれ少なかれ
私たちのなじんできたのと違う
速さでひかれたが
その速さには
生まれたばかりの作品を
きくような新鮮さがあった」
加藤周一は
「息をのみ
手に汗をにぎり
そもそも次の瞬間になにがおこり
どう事がはこぶのか
始めから終わりまで
その楽器からあふれ出してくる
燦爛たる音の流れに
引き入れられた。
いや
そこには
その音の流れのほかに
なにもなかったというべきであろう」